♯8 株式会社 佐平建設 SAHIRAスピリッツ製造所 工場長 大嶺 太亮さん

「終わりなき挑戦の、その一杯」
宮古島のサトウキビから生まれたラム酒の物語

 

バイオエタノール工場の管理から、まさかのラム酒づくりへ。最初は想像もしていなかったというその転機を「まずは自分でやってみる」。と言うその言葉どおり、酒造免許の取得から発酵や蒸留の技術まで、すべて一から学んだそうです。今回は自分の手で事業を形にしていったという、静かな熱意を感じる大嶺工場長のお話を伺ってきました。

Interview

●予想外の一言から始まった、ラム酒づくりの道

この事業を始めたきっかけを教えて下さい

もともとはラム酒を作るつもりはまったくなかったんです。宮古島のバイオエタノール工場の管理を引き受けたのがスタートで、島で生産されるサトウキビをエネルギー源として活用するという流れの中にいましたある日、工場の見学に来た方から「これってラム酒とかできないの?」というひと言があったんです。その時は冗談半分に聞いていたのですが、調べてみると、ラム酒の原料はサトウキビ由来の糖蜜やジュース。つまり、理論的にはこの工場でもできるのでは?と思い始めて。そこから本格的に、ラム酒製造に必要な免許や品質管理、発酵・蒸留技術などを一から学び、準備を進めていきました。酒づくりなんてまったくの素人からのスタートでしたが、「やってみないと分からない」という思いで動き出したのがきっかけです。

●サトウキビの新たな可能性を形にする仕事

事業の内容について、教えてください

現在は、宮古島産のサトウキビを原料としたラム酒の製造・販売を中心に事業を展開しています。宮古島ではサトウキビは農業の中でも特に重要な作物であり、これをお酒という形に加工することで、これまでにない新しい付加価値が生まれると考えています。また、もともとの工場の背景でもあるエネルギー利用、つまりバイオエタノールとしての活用についても、並行して可能性を模索しています。飲料としての楽しさと、エネルギーとしての未来。その両面を探るような、多角的な視点で動いているのが特徴です。

●ゼロからの挑戦がくれる、手応えと難しさ

やりがいを感じる瞬間を教えて下さい

やっぱり「初めてのことをやる」って、面白いですね。もちろん大変なことも多いですが、誰かの真似ではなく、自分で情報を集め、方法を考えて、試してみる。その繰り返しが、今のラム酒づくりのすべてだと思っています。何が正解か分からない世界の中で、自分なりに「これでいけるかも」と思ってやってみる。結果が出れば嬉しいし、うまくいかなければまた考える。そのプロセス自体に、すごくやりがいを感じています。
でもそれと同時に、そこが一番の難しさでもあるんですよね。誰もやったことのないことに挑戦しているという自負はありますが、当然その分だけ、手探りの時間も多いです。でも、だからこそやる意味があるのかなと思っています。

●島の外に出ることの壁と、それでも伝えたい想い

宮古島(離島)で事業をしていく中で大変なことはありますか?

やっぱり一番の課題は「販路」ですね。島の中でお酒を飲む人は限られているし、そもそも全国的にもお酒の消費量は減っている傾向があります。だからどうしても、本島や県外への販売が必要になります。ただそれには営業活動やイベント出展など、島を出て動く必要があるんです。これが意外と時間もコストもかかります。今はオンライン商談やSNSなど便利なツールもありますが、やっぱりお酒は「人と人とのつながり」で売れていく部分が大きい。顔を合わせて話すことで、信頼も生まれますし、こちらの想いも伝わります。だから私は、なるべく人と直接会って伝えるというスタイルを大事にしています。

●島の資源を活かすという、確かな強み

宮古島(離島)だからこその強みはありますか?

なんといっても、サトウキビが地元の基幹作物であるということです。これを使っていること自体が、すでに宮古島らしさを表していると思います。しかも、サトウキビって砂糖の原料というイメージが強いですが、実はお酒の原料としても非常に魅力的。地元の資源を使って、それに新たな付加価値をつけて島外に届けることができる。これはすごく意味のあることだと思います。観光客の方が島でこのラム酒を手に取ってくれたり、お土産に選んでくれたりすることで、サトウキビと島の魅力がセットで広がっていく。それが、今後の島の発展にもつながるんじゃないかと考えています。

●まずはやってみる。行動から見える景色

好きな言葉や座右の銘はありますか?

「何事も興味を持って、まずは自分でやってみる」というのは、昔から大切にしている言葉です。人に聞くのももちろん大事ですが、その前に自分で調べて、考えて、やってみることが何よりの学びになると実感しています。ラム酒づくりに取り組むようになってからは、まさにこの言葉を体現する日々でした。誰かに頼る前にまずは自分で調べて動いてみる。そうすることで得た知識や感覚は、自分の中に深く根づいていく感覚があります。うまくいかないことも多いですが、失敗もまた貴重な経験。だからこそ、今後もこの言葉を信じて、自分の手で道を切り拓いていきたいと思っています。

●終わりのない試行錯誤が、この仕事の本質

あなたにとってこのお仕事とは?

自分にとってこの仕事は、まさに「終わりなき挑戦」だと思っています。
酒を造ることも、売ることも、どうすればベストなのか、どこに正解があるのかが見えない。だからこそ、常に考えながら模索し続けなければならないんです。そして、それは怖くもあり、ワクワクすることでもあります。終わりがないからこそ、常に成長できるし、飽きることもない。変化していける仕事です。

●宮古島発のラム酒を、もっと多くの人に

これから挑戦していきたいこと、目標があれば教えてください。

一番は、もっと多くの人に飲んでもらうことです。おいしいって言ってもらえた時の喜びは、やっぱり何にも代えがたいものがありますし、知ってもらえなければ何も始まらない。事業としてもしっかり継続していけるように、今は販路の拡大とブランドの認知に力を入れています。ゆくゆくは、「宮古島といえばこのラム酒」と言われるような存在になれたら嬉しいですね。そしてその先には、もっと大きな循環や地域の活性にもつながっていけたら——そう思っています。

WEB:佐平建設: ANGE(アンジュ)| 沖縄・宮古島のラム酒  https://sahirum.com/

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